大村しげについて

大村しげ(本名 大村重子)さんは、生涯をかけて京都の料理や暮らし、名店、名所、工芸、伝統文化と、幅広い情報を書き記した人物です。京都をテーマに、これほど多くの随筆を残した人物は、彼女をおいてほかにはいないでしょう。

撮影:土村清治

 

1918年、祇園の仕出し屋(のちに魚屋)の娘として生まれ、1950年代頃から文筆を開始。彼女の名が知られるようになったきっかけは、1960年代に秋山十三子さん、平山千鶴さんとともに、朝日新聞京都版にて始めた連載「おばんざい」です。「おばんざい」は「お番菜」(またはお晩菜、お飯菜とも)と書き、昔の京都(関西との文献もある)では家庭料理のことを、そう呼んでいました。連載は食べ物を通じた京の歳時記で、三人が幼いころから口にしていた料理や食材について書き記すとともに、京都の家庭や商家の習慣、伝統行事との関わりについても紹介しています。これ以降、おばんざいの言葉が全国に普及しました。その後も、しげさんは、京都の食生活を中心に、数多くの雑誌に記事を執筆したほか、著書を多数出版。文章は京ことばで書かれており、これが彼女の大きな特徴でもありました。このことから、いつのまにか「おばんざいの大村しげ」として、その名を知られるようになっていったのです。

しげの著書

1980年代には古くからの友人である鈴木靖峯さんの誘いで、バリ島へ旅行をしたのをきっかけに、バリ島に魅せられることになります。以降、毎年6月に出掛けていましたが、1994年に現地で脳梗塞により倒れ、車いす生活に。そのため住み慣れた京都の町屋での生活を断念し、1995年にはバリ島へ拠点を移し、過ごしやすい春と秋に京都へ戻る、二拠点での生活を開始しました。1990年代にはバリ島生活や車いす生活についての著書を発表。1999年3月18日、バリ島で永眠。没後、京都の住まいに残された4万5000点を超える、ほぼすべての生活用品は、昔の暮らしを知る資料として、国立民族学博物館に収蔵されました。

「大村しげ 京都町家ぐらし」河出書房新社 発行、編=横川公子(版元品切れ)
「大村しげ 京都町家ぐらし」河出書房新社 発行、編=横川公子(版元品切れ)

大村しげについてもっと知る

大村しげさんについて、より詳しく知りたい方は「大村しげ 京都町家ぐらし」を、ぜひお読みください。本著は生活用品、おばんざい、しげの一生の3テーマから、人物像や暮らしぶりなどを非常に丁寧に研究・解説しています。しげさんの生きた時代背景、京都の観光ブームの客観的な考察に至るまで、多面的に分析した教科書的な一冊です。
大村しげさんの著書の多くは、絶版となっており、現在は古書店や図書館で探す必要があります。「大村しげ 京都町家ぐらし」も、現在は品切れの状態となっています。