大村文体

大村しげさんが京ことばで本を書き残しているのは、著書を呼んだ方ならご存じだと思います。
いわば大村文体ともいうべき、著述スタイルについて、紹介しましょう。

お世話になっている編集者さんから、京ことばでの執筆依頼がありました。
モノマネ芸人ではありませんが、大村さんの文体を参考にしながら執筆してみることに。

大村さんの文体の特徴は、「である」「している」といった断定的な語尾が特徴的で、体言止めは使われていません。
体言止めとは、「非常に新鮮。」「都であった京都。」など、名詞、代名詞で文を終えてしまう文体を言います。
大村さんはきっと、文章が軽薄な印象になるのを避けるために、極力、体言止めを使わなかったのではないかなと思います。

また、話し言葉のように、なにからなにまで京ことばで書いているわけではありません。
「どす」「どっせ」などの語尾は、カギカッコ内の口語でしか使われていないのです。

実は、標準語と変わらない文章で書かれている部分が大半です。
ところどころに「してはる」「ほんま」など、京ことばが織り交ぜられているほか、「 」のなかで、口語の京ことばが書かれているので、
読み手はいつの間にか、すべてを京都風のイントネーションで読まされてしまい、なにもかもが京ことばで書かれているかのような印象を受けてしまう。これぞ、大村マジックです。

京ことばと普通の文体のバランスをみながら、読み物として成立するように配慮しているのが、意識して読めば分かります。
一般の人が京ことばで、ブログなどの文章を書くと、読みやすさにまで配慮が及ばずに、ただただ京都(というよりも関西弁)の口語で書いてしまい、くどくなってしまうわけです。

じっくりと研究すれば、初期、中期、後期など、大村さんの文体の変化が見分けられるやもしれません。

そんな視点で、著書を読んでみるのも、大村さんの書き手としての巧さがわかって、おもしろいのではないでしょうか。

ついでに言えば、大村さんは「京都弁やない、京ことばや」と京ことばというキーワードにこだわっていらしたそうです。