雷どうふ

大村しげさんが『美味しいもんばなし』(鎌倉書房)で、雷どうふについて著述を残しています。大村さんのご両親は信心深く、お寺さんとも親しくお付き合いをされていました。

『美味しいもんばなし』では、円福寺(京都府八幡市)の雲水さんから、さまざまな料理を食べさせてもらった記憶が綴られています。

いくつも紹介されたなかで、印象的なのが「雷どうふ」です。

「お膳に雷どうふがついてきたときには、びっくりした」(『美味しいもんばなし』)

雷どうふは、しいたけとにんじんのみじん 切り、ささがきごぼうなどが入った豆腐料理です。

ところが大村さんは、卵を使った料理と信じ込まされていたから、驚いたわけです。というのも、本来、動物由来の食品である卵は、仏教徒が口にしてはいけないものだから。

「私は最後まで卵やとだまされていた。それがおとうふであると知ったのは、もっと後になってからである」(『美味しいもんばなし』)

その後、母親がときどき作ってくれて、それを父親が喜んでいた様子も紹介されています。

前置きが長くなりましたが、今回は著述を基に、雷どうふを作ってみました。

今回は豆腐、しいたけ、にんじん、ささがきごぼう、木綿豆腐を用意。

以下、手順は同著より抜粋。

  • 水気を切ったおとうふをつぶしておく。(文章によるとすり鉢でつぶします)
  • かやくを油でよう炒って、そこへお豆腐をいれ、強火でもっと炒る。
  • うすくちのおしたじとお酒でうす味をつけたおだしを、炒ったおなべにいれて、ゆっくりと炒りだきにする。
  • じくみつ葉の刻んだのは、最後にいれて、さっと炒る程度。

※3番の“おしたじ”は醤油のことです。

 

なにしろ、写真もなければ、分量も書いていないので、自分の作ったものが、大村さんの食べたものと同様なのかはやや心配ですが、そこはご容赦を。

お豆腐は1丁、しいたけ2個、にんじん1/2本、ささがきごぼうは軽く一掴みといった具合です。しいたけ、にんじん、ささがきごぼうは目分量で同じくらいにしました。

本来は精進料理ですから、お出汁もお精進でなくてはいけません。干ししいたけを戻して、その出汁を使うと効率が良いのですが、今回はしいたけの味が強すぎた印象です。しいたけは1個でもよかった。2個使って、さらにしいたけを戻した汁まで使うと、しいたけの味が強すぎると思います。俗世の方は、お好みでかつお出汁などでもよいのではないでしょうか。

また、“炒りだき”とあるので、出汁の量は少なめを心がけてください。具材の半分くらいが浸かる程度の量で、あとは様子を見ながら足りなければ少しづつ足すと失敗がないでしょう。

とはいえ、しいたけ好きの私には、好みの料理でした。

なぜに「雷」の名が付くのかは、おとうふをつぶすときの、すり鉢の音とか、油で炒めるときの音などの諸説があることも書かれていました。

簡単なので、機会があれば、ぜひお試しください。