旅 1981年12月号

日本交通公社発行の雑誌『旅』1981年12月号を入手しました。
名菓のふる里と題して、日本各地のお菓子が紹介されています。
大村しげさんは「京菓子物語」の企画のなかで、「栗きんとんと京の老舗」を書いています。

記事の前半は、松屋常盤さんのきんとん、丹波の和知栗を紹介。
和知栗は京都府船井郡和知町(現在の京丹波町)の名産です
彼女は現地へ赴き、生産や収穫、出荷の様子、品種の違いなどを丁寧に綴っています。

 

記事の後半はお菓子の歳時記となっており、葩餅(川端道喜さんの菱葩が元祖であることも記述)、ひちぎり、かしま餅とちまき、みなづき、あんころ、お迎え団子、お見送り団子、おはぎ、亥の子餅などを解説。

さらに予約のみのお菓子屋との付き合い方や、作り置きがない真意、松屋常盤のご主人が大村さんの自宅へ出向き、目の前できんとんを作ってくれた様子を語っています。

残念ながら、松屋常盤さんは、2018年に私が確認した時点で、すでにきんとん作りをおやめになっていました。(名物の松風は健在です)

もう一点、この雑誌で注目すべき点は、お仲間の秋山十三子さんが「京銘菓十選」のタイトルでお書きになった記事。
ご紹介になったのは下記10店です(敬称略)。

生風庵の雪餅
植村義次の州浜
二條若狹屋の家喜芋
亀廣安のふきよせ
亀屋則克の打ちもの(木型で固めて作るお干菓子)
末富の竜田姫
松屋藤兵衛の味噌松風
亀屋良永の小倉山
川端道喜のちまき
麩嘉の笹巻き(麩まんじゅう)
うち、生風庵さんはお店を畳まれました。植村義次さんは一度閉業されましたが数年前に再開なさっています。

 

また、別のページに「全国お菓子風土記」という企画があり、ここでも秋山さんは執筆なさっています。
3名の筆者のお名前が最初のページにまとめて書いてあるため、詳細はわからないものの、京都の聖護院八ツ橋総本店(八ツ橋)、豆政(五色豆)、祇園するがや下里(豆平糖)、水田玉雲堂(唐板)についての記述は秋山さんがお書きになったとみて間違いないでしょう。

全国のお菓子を丁寧に取材し、ほかにも安西篤子さん、中山あい子さん、椎名誠さんなど、多くの方が執筆なさっていて、非常にボリューム満点の一冊です。
ページは268ページ。日本交通公社が旅のために出版していたので当たり前とはいえ、宿泊先の情報から広告まで時代の勢いにあふれています。

情報が現在、どの程度通用するかはともかく、今後、他府県に出向くことがあれば参考にしてみます。