本日、YouTubeに、新しい動画を追加しました。
今回は、大村しげさんの著書『ほっこり京ぐらし』(淡交社)の一節から。
彼女が丹波の山寺で食べた、すみれご飯の調理動画です。
動画のリンク → https://www.youtube.com/channel/UCP1TUF6oqZPlWrraRqm40_w
記述によると、丹波の山寺の和尚さんが、見事に咲いた枝垂桜を見に来るよう、彼女を招き、その案内に「すみれご飯を進ぜましょうや」と書かれていたとのこと。
彼女は、すみれご飯を「夢のようなご飯である」、「マリー・ローランサンの絵のようなふぜい」と表現しています。(ともに『ほっこり京ぐらし』より)
非常にきれいな山の中に咲いている、すみれを摘み取って作るもので、いわば山菜料理のような感覚なのでしょう。すみれの花は、花の部分だけであれば食用にして問題ありません。
今回、すみれご飯を作るにあたり、近所の馴染みの花屋さんに相談したら、翌日には2パック、仕入れてくださいました。2パックで770円。アイスクリームのようなカップに入っています。
これだと送料もかからないので、ネット通販にしなくてよかった。ご興味のある方は、まず、お近くのお花屋さんに聞いてみてください。
最近は、こうした食用の花は「エディブルフラワー」と呼ばれています。
もし、大村さんが、すみれをパックで買ったと聞いたら、呆れてしまわれたでしょうね。
すみれを摘むところから、再現できれば理想的ですが、なかなかそうもいきませんので、ご容赦を。
細かい手順は、動画をご覧いただくとして、個人的に気の付いた点などを書いておきます。
動画通りの塩加減だと、塩味がかなり薄めです。ただし、好みもあると思いますので、塩を控えめにして、炊きあがったときに味見をして、加減をするほうが安心です。
『ほっこり京ぐらし』には、軸はゴミにみえるので、花の部分だけを使うと書いてあります。花びらの根本のグリーンの部分に、独特の苦みがあるので、花びらだけを使ったほうが食べやすい気がしました。多少、グリーンの部分が残っていると彩りはよいので、そのあたりはお好みでどうぞ。
動画では説明していなかった、ガス火でご飯を炊く際の注意点を補足します。「はじめちょろちょろ中ぱっぱ」なんていいますよね。私の場合は、これをせず、消えそうな最小の火でスタートして、そのまま火力はいじりません。15~20分くらいすると焦げたにおいがしてくるので、そこで留めて、10分ほど蒸らしています。
すみれご飯は、春の風情を楽しめる、本当に美しいご飯です。
そして、文章では、ただ料理の魅力だけを語るのではない点にも注目してください。山寺の一件ののち、彼女自身が常照皇寺で、すみれの咲く草原を見つけるも、次の機会にはその場所が駐車場となってしまっていた描写があります。
”すみれの花影はどこにも見当たらなかった”
『ほっこり京ぐらし』(淡交社)より
この一文は、そこはかとない悲哀を感じさせます。またひとつ、京都から情緒がなくなってしまったと思われたかもしれません。彼女の足跡を辿っていると、同じ気持ちになることがしばしばあります。仕方のないことではあるけれど。