お精進のにぎり

YouTubeにて新しい動画を公開しました。

今回の動画では大村しげさんが『京 台所の詩』(淡交社)で紹介した、お精進のにぎりを作ってみました。


動画リンク https://youtu.be/PtPB8SojZHQ

こちらは前回公開した、おこぶずしの姉妹編ともいうべきものです。
彼女は宝鏡寺で、お精進のおすし「おこぶずし」を教わり、それを自分で応用しています。
お精進のにぎりずしも、彼女の考案した料理のひとつです。

酢飯を炊いて、好みで味付けしたお精進の食材あれこれを、にぎるのがポイントです。

 

豆知識/お精進について

説明不要でしょうが、「お精進」とは、仏教の戒律に基づいた菜食のことです。しかし、Wikipediaの精進料理の説明に「五葷(ネギ科ネギ属などに属するにんにく、ねぎ、にら、たまねぎ、らっきょう)は禁忌とされることがある」と書かれています。気になって、大村さんが文章を書いた『京の禅寺と精進料理』(佼成出版社)を、読み返しました。同書で100件ほど紹介されている精進料理のレシピのうち、ネギを使っているのは、うどんの項目のわずか2種類のみでした。

 

今回の具材は干ししいたけ、生麩(あわ麩)、乾燥ゆば。生麩は関東では百貨店以外には、あまり置いていないようです。乾燥ゆばは、千丸屋さんで買ったお徳用の残りです。大半を使ったあとで、袋には細かいかけらしか残っていなかったので、今回は軍艦巻きにしました。

もともとは、おこぶずしの応用として、自分で炊いた塩昆布を使った押し寿司があり、そのさらなる派生として塩昆布をにぎりずしにした経緯が、『京 台所の詩』に記述されています。
塩昆布のにぎりについて、下記の一文があります。

 

ひと口にはいるぐらいの小さいのを、ぽいぽいと口へほうり込んでいると、なんぼでもいただける。

『京 台所の詩』より

見よう見まねで握るも、すし職人には、絶対なれへんなあ、と痛感しました。簡単な手巻きずしが人気なわけです。

文章にも注目すべき点がありました。おこぶずしが新緑の季節にぴったりであることが冒頭で語られており、それを再度強調して、文を締めくくっている点に、センスを感じます。

 

尼寺さんでも、こんなおすもじを召し上がったやろうか。きっと、わたしが思いつくぐらいやから、もう、とうの昔になさっていたやろう。青い風が、さっと吹き抜ける。

『京 台所の詩』より

 

形は悪いけれど、おいしくできました。ぜひお試しください。